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2006年9月23日 (土)

LOFT ロフト 黒沢清監督

 http://www.loft-movie.com/ 

午後から黒沢清監督の「LOFT」を観に横浜のニューテアトルへ。この古い地下劇場の雰囲気がこの映画にはぴったりあっていた。最近は何か仕事のついでだとか、打ち合わせの合間とかに映画を観る気力が起きないというか体力的なものもあるのか、脳内に映画を観るエネルギーを別に作らないと映画を観ないので、映画を観にいく日は朝から映画を観ることだけしかできないと言う感じになってしまう。要は瞬発的な集中力がとぎれがちなのかなあ。と言うわけで遅ればせながらの鑑賞になったわけであるが、これはなかなかに黒沢さんの意欲作だった。

 黒沢清+篠崎誠による「恐怖の映画史」の実践編と言うか、黒沢さんに言わせれば「まだまだ本当の恐怖はまだ撮れます」と言うことになるのだろうが、湖畔に仕掛けられた自動装置だとかミイラの動きであるとか、起き上がりこぼしであるとか、そういった映画の仕掛けを試してかなり成功している。黒沢映画でゴシックホラー風に進む展開は、ちょっと体裁は違うけど『地獄の警備員」を思い起こさせた。監督はラブストーリーであることを強調していたが、ラストで「めまい」を思い起こさせる突然の転落を見ると頷くところもあったが、ミイラへの想いと中谷美紀への恋慕が重なる歪んだ豊川教授の眼差しはどこか、『地獄の警備員』でヒロインが落としていったイヤリングを自ら装着する富士丸の眼差しに似ていなくもない。狂人の編集長西島秀俊の芝居もいい。ただ、こうした世界観で行くなら、森の中と下界との繋がりは西島編集長だけにしておくべきで、携帯電話が使えたりとか、連絡がまったくとれない環境の中で進ませた方が得策だったのではないかと思ったがどうだろうか?例えば冒頭でビニールの布で包んだミイラを抱きかかえて車から家の中に運ぶ隣人を見たら、アレはどう見ても遺体を運ぶ人にしか見えず、「普通は」まず警察に連絡したりするのではないか?と言う疑問は消し去っておくべきではなかったとか、説明的に進ませるのではなくある寓話世界を作るルールは決めた方が良かったようにも思えた。

 それでも室内に漏れてくる光の使い方とか、緑の中の中谷美紀、湖上の自動装置の異様な美しさは久々にダイナミックな映画を観たと言う贅沢な気分にさせられる邦画で、中谷美紀も最近の映画の中では一番美しかったし、トヨエツの言葉少ない怪人ぶりもよかったし(怪人はシルエットが格好よくなくてはいけないのだ!)、何より西島秀俊の棒読み風の狂人芝居も凄い演出だと思う。いまのところ今年観た邦画ではベストだろう。我らの上に君臨する大帝黒沢清の仕事としてはやはり充分にひれ伏すだけの価値を持った映画ではあった。これは、一瀬さんのところで撮った「叫」も楽しみだ。

 僕はこれを観てトヨエツ主演で「ファントム・オブ・パラダイス」とか撮って観たくなったですよ。

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