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2006年9月26日 (火)

丹波哲郎よ永遠に・・・

 丹波哲郎さんが亡くなられた。84歳と言うことだったので充分天寿を全うしたと言うことだろうが、ぼくにとっは、昨日高校生ドラフトで横浜が田中将大を籤で逃したことよりもショックが大きかった。

 今時は、子供も結構遅くまで起きていたりするようだが、僕らの時代は小学校低学年くらいまでは夜9時以降のテレビを見ずに寝るのが普通だった。そんな中で、土曜の9時から始まる「キイハンター」だけは見ることが許されていた。これは同年代の人に聞くとどの家庭もそうだったようで、今から思えば結構子供には害毒な内容もあったと思うが、親が子供に見せてもよいと判断したのは、単に土曜の夜だったからなのだろうか・・・。菊池俊輔作曲による「殺しのライセンス」のテーマと共に始まる、和製ハードボイルドスパイドラマは、荒唐無稽でいながら、凝った作劇法やコメディセンスに満ちていて、小学校を卒業するまで『キイハンター』はほぼ毎週見続けていたのではないかと思う。そう言う中で、子供の僕にとって、初めて「大人の俳優」として認知したのが、丹波哲郎氏であった。当初はモノクロ放送だったこともあって、黒いハットを被ったタンバこと「ボス」はおちゃらけた芝居の千葉真一や谷隼人の緩い芝居とはまた別のハードな役回りを担って極めて格好良かった。

 その後もこの枠は近藤照男プロデューサーが枠を持つ限り、曜日や放送時間は変われど、90年代の「HOTEL」まで受け継がれた。その近藤氏も去年亡くなられた。70年代後半からの丹波氏は、大作化する邦画界にあって、決してなくてはならない存在となり、東宝、東映、松竹全ての映画会社が創る目玉大作にはほぼ出演していた。大作映画=タンバ出演だったのだ。90年代の中頃、『北京原人』と言う珍企画が東映の正月映画として公開され、佐藤純弥監督がメガホンをとったが、見事にタンバ節を炸裂させ、70年代のタンバをそこに復活させていた。思えば佐藤監督は「キイハンター」~「Gメン75」のチーフディレクターでもあった。

 僕らの周りで丹波さんと仕事をなされた人は一瀬隆重さんだろう。一瀬さんが自らメガホンをとった『帝都対戦』において霊的呪殺を行ってヒトラーを殺すシーンはやはり最高に興奮するタンバ芝居だった。タンバならヒトラー総統を呪殺できる説得力があった。

 とにかく、出てくるだけで世界観を変えられる役者はそうはいない。実は「ケータイ刑事 THE MOVIE」の初期の打ち合わせの頃、悪の親玉の正体が丹波哲郎で、車椅子に乗って覆面をしていて、声はどう聞いてもタンバ節なのだがあくまで謎の男ととぼけて、最後に捕まると、やはり犯人はタンバでした。と言うのはどうだろうかと言う提案をしたが、一笑に付されてしまったことがあった。3人娘にとっての最大の敵に相応しいキャスティングだと思ったが、今思えば、予算的な面や健康的な問題も含めて極めて非現実的な案であった。

 でも、一度は仕事をしてみたかった人がまた一人お亡くなりになられたことは確かだ。ご冥福をお祈りします。

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コメント

監督こんばんわ。私も丹波さんのご冥福をお祈りします。
悪の親玉の案なかなか読んでいて楽しくなりました。さすが、目の付け所が違いますね。映画宣伝で初めにキャスト名が出てしまうとバレバレですね。そういう隠しキャラの場合はどうするのでしょうか?

投稿: たじ | 2006年9月27日 (水) 01時28分

 隠しキャラは難しいですね。確かに。隠しキャラと言えば、日本未公開のインド映画に凄いのがありました。インド映画は大抵3時間弱くらいあるのですが、映画開始の1時間後くらいに、ここぞと言う感じでカッコウイイダンスと共にクレジットには名前がなかった大スターが登場してくるんですよね。イントロでは後ろ向きで踊っていて、まさかあの人がと思っていると、歌う場面になったとたんに振り返るとそこにスターがいる。インドでは映画館でスタンディングオーベーションまで起こったそうです。この映画では、エンディングに主役のクレジットが出る前に「スペシャルゲスト サルマン・カーン」と出ていましたね。
 日本では中々難しいと思います。松田優作が仲のいい監督の日活ロマンポルノにゲスト出演したりしても、すぐに映画雑誌で紹介されたりしていましたからね。

投稿: sasaki | 2006年10月 2日 (月) 12時28分

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