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2007年10月29日 (月)

浦島太郎の後裔

 昨日は終日休みで、撮影中にCSの日本映画専門チャンネルで放送されていた成瀬巳喜男の「浦島太郎の後裔」を観る。タイトルからは想像できない珍品。でも相当に社会風刺的な内容で、一応社会派に入るのかな?最初は戯曲の映画化なのかと思われるような演出(脚本も)で、物語そのものは退屈だったりするんだけど、後で調べるともとはキャプラの「スミス都へ帰る」なんだそうだ。ざっと物語を書いてみよう。

 ラジオ局で「あああああああうううううう!」と叫ぶことで、戦後すぐの国民の人気者になる浦島五郎は、新聞記者高峰秀子の勧めで、国会議事堂のテッペンで「ああああああううううう!」を叫び始めることになる。この「叫び」は戦争に負けた当時の人々の心を打つものとして、さらに浦島の人気は広まる。この浦島が国会議事堂の頂上で叫ぶ場面はミニチュアを使った円谷英二の演出になるが、ヒゲモジャの藤田進の雰囲気が「キングコング」のようにも見えないことはない。やがて、浦島はろくでもない政党に利用され、政党の大物の娘は浦島を一人占めしようと誘惑を始める。浦島の人気で、この財閥の手先の政党はやがて、第1党としての地位に登りつめていく。が、良心の呵責に耐えかねた浦島は党大会の演説に乗り込んで真実をぶちまける。

 と、ここまで書いてもメチャクチャなストーリーであることがわかる。これ、岡本喜八とかが後年描けばもっと軽くてコメディ活劇になったんだろうけど、成瀬の演出はいつもどおりで、街中を高峰秀子が歩くカットは「浮雲」や「乱れる」でも観られるような静かな活劇性の中で構成されていく。だから、どこか覚めているというか、ちっとも話が盛り上がらないままクライマックスに突入していく。大勢の観衆の前で演説する映画は多いが、僕はグル・ダッドの「渇き」を想像してしまった。

 成瀬の歴史の中でも相当に評判はよくない映画だが、僕には充分楽しめました。

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