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2011年2月

2011年2月 1日 (火)

人魚伝説

 およそ27年ぶりに「人魚伝説」を観た。先週は「英国王のスピーチ」も「ソーシャルネットワーク」も観たのだけど、敢えて「人魚伝説」について書きます。

 この映画を最初に観たのは1984年の春。僕が北海道から上京してディレクターズカンパニーで助監督を始めようとゴジさんにアポをとっている頃のこと。「俺に会いに来る前に『人魚伝説』観てこい』みたいなことを電話で言われたので、歌舞伎町シネマ1という実に小さなスクリーンの劇場で観た。寂しい人の入りだった。映画はとにかくパワフルでATG映画というより、猛烈な血が飛び散る日活ニューアクションの香りが入った復讐劇で随分と興奮した記憶があった。劇場の外へ出ると、目の前には新宿プラザの巨大なアル・パチーノの「スカーフェイス」の看板があった。負けるものか、俺もここで頑張るんだ!そういう想いで新宿の街を後にした。

 27年ぶりに再会した「人魚伝説」は綺麗なプリントで、シネマヴェーラの鑑賞環境も歌舞伎町シネマより遥かに良かった。映画は27年ぶりに見ても全然色褪せていなかった。脇役の顔ぶれなどを見ると思った以上に豪華で、宮口精二さんなんか出ていたのすっかり忘れていた。四半世紀前の映画ので悪役俳優たちの素晴らしさを堪能できる。ラストの白都真理さんの体を張ったアクションはいま見ても素晴らしい。警察のサーチライトを浴びる血まみれの白都真理が一言「眩しいな」と呟く様はまさに渡哲也のそれで、池田さんが心底日活ニューアクションを愛していたんだと思わされる。そして、エンディングで素っ裸になった白都真理が海底から上昇していく姿が、海面に射しこむ太陽の光に美しくシルエットになっていくところで本多俊之のメインテーマが流れると思わず涙が流れてきた。池田さんはこの海に飛び込んだのだ。白都真理が人魚伝説になったように池田さんも伊勢志摩の海に消えた。映画は誰もいない海底を映しながらクレジットが流れて終わる。ローリングの最後に池田敏春の名前が浮かんだ時、また泣いてしまった。僕は画面に向かってそっと合掌し劇場を出た。

 目の前にもう「スカーフェイス」の看板はなかったが、もう一度俺は頑張らなくちゃいけない!そう改めて思った。それがせめてもの池田さんと潰れたディレカンに対する僕の思いだ。

 本日もう一日、「人魚伝説」は渋谷のシネマヴェーラで上映されているので是非観に行って欲しいと思います。

 

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