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2011年1月2日 - 2011年1月8日

2011年1月 4日 (火)

ノルウェイの森

 正月最初の映画はトラン・アン・ユンの「ノルウェイの森」。村上春樹の著名な原作で、僕も出版当時の20数年前に読んだことがある。当時、母が鬱病にかかり精神科の病院に入院し始めた頃で、それが治るどころかどんどん悪くなっていく一方で、北海道へ帰るか東京に残って助監督の仕事を続けるのか悩んでいる頃に読んだので、精神的に追い詰められていく登場人物の物語はずっしりと重たいものを呑み込まされて行ったような印象があった。

 それから20数年、母は既に鬼籍に入り僕も結婚し時代は変わった。小説「ノルウェイの森」の記憶もかなり薄れているところで、今回の映画を観たので原作との比較論は僕には出来ない。ただ多くの人が指摘しているように、小説の台詞を役者がそのまま言う事への違和感は最期までつきまとった。村上春樹の小説の台詞は独特で、これを人が喋る言葉に置き換えるのは不可能であろうから、村上春樹を原作にした時点でこの方法論になるのは間違ってはいないと思う。例えば山中直人監督による「パン屋襲撃」や「100パーセントの女の子」も原作小説をそのまま映画にしたものだったが、ナレーションを効果的に使い、それまで山川直人が撮ってきた「アナザサイド」や「ブリンギングイットオールバックホーム」とほぼ同じ方法論と村上春樹の文体がそれほどかけ離れていなかったせいもあってそれほど違和感はなかった。しかし、今回の「ノルウェイの森」の台詞がどうしても気になってしまうのは、語られなければならない深刻なテーマをあの台詞回し、更にそれを音楽的に編集してしまった点にあるのではないか?編集のリズムが音楽的であることは悪いことではない。ゴダールの映画も市川崑の映画でもその方法論は使われている。しかし、今回の日本語のテキストが違和感あるのは伝えなければならない感情が削がれていく故ではないか? 映像は美しい。恐らく最近の日本映画では最も美しい映像をリー・ピンピンや別班の福本淳は撮ったと思う。この難しい台詞回しを松山ケンイチや菊地凛子はじめとする俳優陣は見事に演じきったと思う。小説の印象は重たいテーマを軽妙に語りきって尚且つ重たい印象が残った。が、映画は美しい画面と確りとした演技と演出(芝居のディティール)、音楽的な編集(これは殆ど映画を褒めるために使う言葉だが)なのに、作品そのものは何か伝えなくてはいけないものを伝えきっていない。そんな印象を受けた。しかし、例えば今回の映画を「パン屋襲撃」の山川直人のポストモダン的な演出で軽妙に撮ったとして、小説のような軽妙さと重さのバランスがとれていたかどうかわからない。

 小説、文学の映画化は難しい。自分はデビュー作が「ナチュラル・ウーマン」だった。これは最終決定稿を松浦理英子さんがお書きになられた。上がった原稿は文字として読むと素晴らしい物だったが、それを役者が喋ると違和感が残ったりシーンの入りや終わり方が編集でうまくいかなくて苦労した。1シーン1シーンがきちんと構成されすぎていて、繋がると違和感があるのだ。そこが映画と文学の物語の語りの難しさを身を持って思い知らされた。その時と同じような違和感が「ノルウェイの森」にはつきまとった。

 純文学映画についていろいろと考えさせるという意味で、年頭に観る映画としては相応しい一本だったと言える。

 

 

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2011年1月 2日 (日)

あけましておめでとうございます

しばらく放置してしまいましたが、今年も宜しくお願いします。

春にクランクイン予定の映画の準備中ですがまだいろいろ発表出来ない段階なのでなかなか書きにくいんですよね。僕はどちらかと言えば「お喋り」な方なのでついいろいろ書きたくなってしまう。

今年はもうちょっと更新頻度を増やさないと。とは思っていますが、ツイッターの方が気楽に書けるのでついそっちが増えているかな。今後はこちらは、長文の映画レビュー専用にでもしようかなと思っています。

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